便秘

便秘とは

便秘の定義を表すことが難しいのですが、日本内科学会では、「3日以上排便がない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態」を便秘としています。つまり、1日、2日排便がなくても不快感がない方や、毎日排便していても便通に関する不快感がなければ便秘とは言えません。 便秘に悩む人は20~60代の女性に多く、加齢によって便秘に悩む人が増加する傾向があります。また、80代では男女ともに10人に1人以上が便秘に悩んでいます。 便秘は、病気が原因で起きる「器質的便秘」と、腸のぜん動運動や腸の水分吸収機能、知覚機能などの機能に不具合があって起きる「機能的便秘」の2つに分類されます。

器質性便秘(狭窄性)

器質性便秘は、臓器や器官の物理的な変形によって引き起こされる便秘のことです。潰瘍やがんによる腸管の狭窄、外科手術後の癒着、炎症による瘢痕などが原因となります。 また、器質性便秘は、狭窄性と非狭窄性の2つに分類されます。狭窄性の器質性便秘は、腸管の物理的な狭窄が原因で便が通りにくくなるもので、非狭窄性の器質性便秘は巨大結腸による排便時間の延長や直腸の腫瘤によって排便が困難になるなど、狭窄以外の理由で便秘が起こるものです。

機能性便秘

機能性便秘は、腸の運動機能、水分吸収機能、知覚機能の問題、ホルモンや体液の異常によって起こる便秘です。食事量が極端に少ない、または薬剤の副作用が原因で便量と排便回数が減少します。 また、結腸で水分が吸収され過ぎる、直腸に滞留しすぎて便が太く硬くなってしまう、腹圧が異常に低下している、ぜん動運動の機能が低下しているなどが原因で排便が困難になるタイプもあります。

 

便秘の検査

一過性の便秘は様子を見ることも可能ですが、症状が続く場合は慢性便秘として受診をおすすめします。また、便秘が続いている、排便は毎日あるものの4回に1回以上の頻度で排便に伴って痛みや残便感など不快な症状が現れる、強くいきまないと出ないなどが持続している場合も受診が必要です。 便秘に伴って腹痛、血便、腹部膨満感などが続く場合は器質性便秘を疑い、大腸カメラ検査を行います。また、腸閉塞を疑わせる強い症状が現れた場合は、腹部CT検査などの検査を行い、緊急の治療が必要かどうかを判断いたします。

当院で行う治療

検査で器質性便秘と診断された場合、原因となっている疾患の治療を行うことで改善が期待できます。検査で便秘の原因となる病気が見当たらない場合は、機能性便秘として便秘そのものの治療にあたります。 機能性便秘の治療の目的は、毎日排便できるようにするというよりも、排便に伴う不快感を取り除き、快適な排便ができるようにすることに重きを置いています。

生活習慣による便秘の予防

便秘に大きな影響を与えているのが食生活や排便習慣などです。食事で食物繊維を十分に摂るとともに、ビフィズス菌をはじめとした腸内細菌叢を整える善玉菌が含まれたヨーグルトなどを食べましょう。 また、決まった時間に1日3食を食べることで、規則正しい排便習慣が身につきやすくなります。そのほか、適度な運動を続ける、同じ時間にトイレに行く、前屈みの姿勢をとるなど、排便に適した環境を整えることも大切です。ただし、直腸や肛門への負担を考慮して、トイレにこもる時間は5分以内を目安としましょう。これらの方法でも十分に便秘が改善しない場合は、薬物療法を検討します。

薬物療法

便秘には、さまざまなタイプの薬があり、薬剤の効き目や副作用を確認しながら適切な薬を使い分けます。薬剤のタイプには、便を柔らかくするタイプ(酸化マグネシウムなど)、浸透圧を調整するタイプ(ルビプロストン、リナチド、ポリエチレングリコール製剤など)、2つのタイプを複合したもの(エロビキスバットなど)、大腸の運動機能を刺激するタイプ(センナなど)などがあります。 排便記録を付けて、服用後の便の回数、形状、硬さ、量などを再診の際に医師に伝えることでより適切な薬の選択が可能になるため、ぜひご協力ください。 また、慢性便秘と過敏性腸症候群の便秘型は似ているため、小腸に機能し、大腸の腸管運動を促進する上皮機能変容薬を使用することがあります。便秘を放置すると、悪化し、生活の質が低下するだけでなく、腸内に便が滞留することで悪玉腸内細菌による腐敗が進み、全身に悪影響を与える可能性があります。 市販薬で自己流に治療すると、服薬量が増えたり悪化することがあるため、消化器内科専門医に相談することが大切です。

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